30歳代以降の妊活の方でお悩みの多い子宮筋腫。
子宮筋腫自体は良性腫瘍なので、生命の危険を伴うものではありません。
しかし、子宮筋腫があることによって物理的に子宮が狭くなり、
身籠った赤ちゃんの発育に影響も与える事も少なくありません。
さらに、子宮筋腫ができることによって、
・過剰な月経血量
・過度な月経量で起こる貧血
・非常に重い月経痛
・月経困難症
などさまざまな症状が起こり、その疲労や苦痛に悩まされます。
これから妊娠を考えている方が、
これらの症状に対して全て西洋薬のみで対応しようとすると、
妊娠・出産時には使えない薬が多い西洋薬では、
無事に出産を乗り切れない可能性も出てきます。
そんな時に有効的な治療薬が漢方薬です。
今回は、”子宮筋腫の治療をサポートする漢方薬”
についてまとめてみましたので是非最後までご覧下さい。
子宮筋腫のようにホルモン関連の疾患でお悩みの方は、
↓下記の記事を読んでから、今回の記事を読むとより理解が深まります。
(子宮筋腫の手術3度した方の話も盛り込んでますので是非ご覧ください)
〜〜〜〜目次〜〜〜〜〜
1、子宮筋腫に対する漢方薬の立ち位置
2、軟堅(なんけん)という漢方独自の考え方
3、各周辺症状に対して効果的な漢方薬
4、まとめ)子宮筋腫で困っている方には漢方薬がおすすめ
1、子宮筋腫に対する漢方薬の立ち位置
子宮筋腫とは、子宮内にできる良性腫瘍です。
悪性ではない為、命に関わる病ではなく、症状がまったくない方もいます。
病院での治療方法としては、
・人工的にホルモンバランスを調節するホルモン剤(GnRHアゴニスト)の投与
・腫瘍を切除する手術
などがありますが、再発例が多いのも現実です。
ただし、これらの治療と漢方治療を比較すると、
”子宮筋腫自体を小さくする”という目的だけを考えれば、
漢方薬よりこれらの西洋治療の方が迅速で効果的です。
したがって、時間に余裕がなく、1日でも早く対応が必要なケースの方は、
手術やホルモン治療を選択肢の一つに考えると良いと思います。
医師と相談して、今の現状をしっかり把握しましょう。
では、子宮筋腫に対する漢方薬の立ち位置は一体どこなのでしょうか。
子宮筋腫ができることによって
過剰な月経量、月経多過で起こる貧血、重い月経痛、月経困難症
などのさまざまな症状が派生して起こり、悩まされます。
これらの症状に対しては、漢方薬はとても効果を発揮します。
したがって、
”子宮筋腫によって起こる各々の周辺症状への治療”
が漢方薬の中心的な立ち位置になります。
2、軟堅(なんけん)という漢方独特の考え方
漢方には『軟堅(なんけん)』という効能があります。
子宮筋腫のような腫瘍を柔らかくして柔軟性を保つ作用です。
そうすることで、卵巣や膀胱など他臓器への圧迫を緩和させることが可能になります。
子宮筋腫を小さくするには、
手術または化学薬品(ホルモン剤)などを投与すると迅速な治療ができまが、
カラダへの負担が大きくなり、体力の弱い方は使えない場合も多々あります。
子宮筋腫はもともと良性なので温存しておくケースもあります。
ですが、筋腫自体が硬い腫瘍で他の臓器への圧迫が強いので、
各臓器が臓器本来の機能を出せなくなります。
そんな時に、この軟堅(なんけん)という漢方の効能を利用して
筋腫を柔らかくさせていくことで多臓器の圧迫を防ぎます。
この治療は経験的に培われた手法で、臨床では細かい配慮が重要になります。
専門家にご相談の上治療を進めていくことをお勧めします。
軟堅(なんけん)作用を持つ生薬:亀板(きばん)、鼈甲、牡蛎など
3、各症状に対して効果的な漢方
今回は4つの漢方薬をご紹介します。
実際に臨床では、20種類程度の漢方処方を使わいけて治療を行なっていますが、今回はメインとして使う漢方薬のみご紹介します。
A)軟堅(なんけん)をサポートする漢方:『亀鹿霊仙廣(きろくれいせんこう)』
『亀鹿霊仙廣(きろくれいせんこう)』は、『亀板(きばん)』と呼ばれる
亀の甲羅に部分から作られた生薬が含まれています。
軟堅薬(なんけんやく)として、堅いものほぐす作用を持っていますので、
子宮内筋腫によって圧迫された周辺の臓器への負担を軽減してる逸品です。
子宮筋腫の治療のベースとして使うのであれば、
・『亀鹿霊仙廣』+『芎帰調血飲第一加減 』
・『亀鹿霊仙廣』+「桂枝茯苓丸の丸剤」
がファーストチョイスになる事が多いです。
(参照→【女性必見】ホルモン関連疾患に対する漢方と鍼灸の治療の意義)
B)痛みが強い時に追加したら良い漢方:『五浄心(ごじょうしん)』
痛みが強い時は田七人参の追加を検討しましょう。
田七人参は止血と止痛の効果がとても強い生薬です。
特に子宮内膜症に使用して効果的だった田七人参製剤は『五浄心』です。
血液を浄化する生薬(水姪、紅花など)が『五浄心』に含まれていますので、
痛みを止めると同時に、子宮の浄化機能を高めてくれます。
C)幅広く効果を示す漢方薬:『桃核承気湯(とうかくじょうきとう)』
桃核承気湯の適応する症状は、実に幅広く、便秘、鼻血や不正出血などの出血症状、
月経痛・腰痛・頭痛などの痛み、打撲による内出血まで応用されます。
月経前に便秘し(便は乾燥気味)、のぼせ、イライラがあり、
月経時に血の塊が排出されると痛みが緩和する人はとても効果的です。
服用する時は煎じ薬がとても効果的です。
特に桃仁(桃の種)と呼ばれる生薬は、エキス剤では出せないような効果を
煎じ薬では引き出せるので、病院で処方されるエキス剤より煎じ薬がおすすめです。
D)月経痛・貧血などで低下した体力気力をサポートする漢方:当帰建中湯(とうきけんちゅうとう)
「虚労(きょろう)」という一種の疲労状態を回復する技術が漢方薬にはあります。
『金匱要略』という古典には、産後の疲労状態などの回復を中心に
この「虚労(きょろう)」を提示しています。
子宮筋腫は、その存在だけでも疲労しますが、月経困難、月経痛、貧血、便秘など
それに周辺症状が加わると、疲労がさらに増していきます。
その強い疲労感を改善することは、今後の治療の潤滑に進めるため重要になります。
薬物治療や手術には体力を奪われるので、その体力をしっかり充填しておく時に
オススメの漢方薬が当帰建中湯(とうきけんちゅうとう)です。
この漢方薬は、特に手術後や分娩後の体力消耗にも使用されることが多いですが、
子宮筋腫などの慢性疾患による体力消耗も使用する機会も多々あります。
・出血過多より貧血を伴う者
・疲労倦怠感と伴に月経時に腹に刺すような痛みや絞るような痛みがある者
・痛みが腰や背にまで及ぶ者
・他の漢方薬を使っても子宮筋腫にまつわる周辺症状が改善しないという者
などの状態の人に効果を示します。
4、まとめ)子宮筋腫で困っている方には漢方薬がおすすめ
子宮筋腫の各々の周辺症状に対しては、
漢方薬は西洋薬の薬物治療と手術より遥かに効果の高い技術です。
これだけでも十分に生活の質=QOLを向上に繋がります。
また、緊急性の高い子宮筋腫の治療には
病院で行うホルモン療法と外科の手術はとても効果的なので、
漢方治療だけでの治療が無敵というわけではありません。
しかし、上記の記事に書いた通り手術やホルモン剤の治療では、
再発症例もあり、予後が悪いケースもあるので、
上記の記事にある『土壌改良=体質改善』が必要な場合が多々あります。
そんな時にも漢方治療が有効です。
結論として、メイン治療が
・西洋治療であれば、そのサポートとして漢方薬は有効です
・漢方治療であれば、生活の質=QOLの向上にも有効です
したがって、
どんな使い方であっても漢方薬は、子宮筋腫の治療に必ず役に立ちます。
是非一度お近くの専門家へご相談して、適切なアドバイスを受けてみてください。