妊娠中に風邪気味だなと感じたら、事前に煎じておいた桂枝湯(けいしとう)という漢方薬をすぐに服用するよう指導しています。桂枝(けいし)という生薬はあまり馴染みはないと思いますが、一般の人は『シナモン(=桂枝)』という言い方の方が馴染み深いと思います。

妊娠中は葛根湯(かっこんとう)や麻黄湯(まおうとう)などの流産率を高める漢方薬は基本的に使えません。
さらに抗生剤などの西洋薬も飲めない時期もありますので、妊娠中は風邪の初期の対応がとても大切です。
しかし、実際に産婦人科で桂枝湯を処方してくれる医療機関はさほど多くはないです。理由は、桂枝湯が医療用エキス製剤では治療効果が高くないためです。
ですが、実は漢方の治療家では最も繁用される基本の処方で、最も効果的な治療薬が桂枝湯なのをご存知でしょうか。
今日はそんな桂枝湯という漢方薬を基に、
どうして漢方のエキス製剤が効果が出ないのか?
漢方薬で効果を出すにはどうしたらいいのか?
について整理してみましたので、是非ご参考にしてみてください。
特にこれから妊娠出産を迎える方は是非一度は読んで頂きたい内容です。

【目次】
桂枝湯(けいしとう)とは一体どんな薬なのか
医療用漢方エキス製剤の3つの問題点
『どの漢方薬を買うか』ではなく『どの人から買うか』が重要

桂枝湯(けいしとう)とは一体どんな薬なのか

まずは桂枝湯(けいしとう)の構成生薬です。
桂枝湯(1日分相当)=桂枝4g、芍薬4g、大棗4g、生姜1.5g、甘草2g
葛根湯(1日分相当)=桂枝2g、芍薬2g、大棗3g、生姜2g、甘草2g、葛根4g、麻黄3g
つまり葛根湯=桂枝湯+葛根+麻黄
要するに葛根湯は桂枝湯という漢方処方に麻黄と葛根という生薬を追加した処方ですので、葛根湯は元々は桂枝湯です。

実は桂枝湯とは、葛根湯を含めた約20前後の漢方処方の基本となる漢方薬で、とても汎用性が高い漢方薬です。
そんな桂枝湯が正しい薬の効果を発現すると「お風呂に入ったように身体がポカポカして温まって心地よい」というイメージをもたれます。ちょうどお風呂に入って、血行不良が改善して、疲労や冷えなどの取り除き、風邪が改善していくようなイメージです。

桂枝湯という薬の効力を最も熟知してたであろう江戸時代の名医は後藤艮山(ごとうこんざん)は温泉療法と桂枝湯を併用することで治療効果をあげていた、言い伝えられています。

『冷えは万病の元』というように、血行改善を行うと、冷えや疲労が抜けるだけではなく、さまざまな病気が軽減していくことは江戸時代以前から考えられていた為の桂枝湯が活躍したのではないでしょうか。

しかし、現在医療機関で処方される漢方エキス製剤の桂枝湯を飲んで「お風呂に入ったように身体がポカポカして温まって心地よい」という感想を実際の臨床現場では聞いたことは一度もありません。

では、なぜ「お風呂に入ったように身体がポカポカして温まって心地よい」という感覚はないのでしょうか。
そこには医療用漢方エキス製剤が抱える問題点がいくつか隠れているためです。

医療用漢方エキス製剤の3つの問題点

桂枝湯のように即効性を求めるような漢方薬はできるだけで煎じ薬をおすすめしています 。慢性疾患でゆっくりと治療を進めていく場合は当店でもエキス製剤をお勧めすることはありますが、桂枝湯を基本とする約20種類の漢方薬に限ってはなるべく煎じ薬をお勧めしています。
そこには、エキス製剤の問題点がありますが、今回に3つに絞ってお話しいたします。
1、天然生薬なのでメーカーごとに効果にばらつきがある
2、エキス製剤にする過程で薬の効果を高める副成分が消失する
3、エキス製剤の処方量の上限が7.5gである

1、天然生薬なのでメーカーごとに効果にばらつきがある

桂枝湯の主役もちろん桂枝(=シナモン)です。
この桂枝の効果のバラツキを原因について整理してみました。
(ア)育った気候:桂枝の原産地は中国とベトナムがメインです。
→育った環境によって主成分の含有量にも、主成分を支える副成分の含有量にも差が出てきます
(イ)収穫時期:安定した生産体制を行うために収穫時期がズレます
→収穫時期の気温や気圧の影響で主成分と副成分の含有量に差が出てきます
(ウ)薬用部位:シナモンをイメージしていただくよく分かるかと思いますが、木の『皮』の部分が薬用部位の基本ですが、木の『実』の部分が混在することがあります。
→『皮』と『実』の部分は薬として効能が異なります。しかし、明確にこの部分を区別して使っている漢方メーカーもありますが、作業効率の関係で皮も実も全部一色単にしているメーカーもあります。

日本には桂枝を薬として見なすための基準はありますが、主成分の含有量しか明確な基準がありません。
しかし、生薬というのは薬としての効果を示す主成分はもちろん大事ですが、実は主成分に補助的に作用してくれる副成分が多数存在し、これらもの副成分の含有量も重要な要素になります。それにも関わらず、副成分の基準は日本では設けていません。

つまり、この副成分の含有量の差によって治療効果が大きく差が出てくることが臨床ではよくありますが、臨床経験を重ねないと分かりません。

天然から抽出した薬だからこそ生薬の効果にばらつきがあるのは当然です。
これを深く理解し、生薬の産地ごと癖、収穫時期の特徴、薬用部位によって品質基準を設け、生薬の加工技術を変えることでメーカーごとの特徴を表現しています。

2、エキス製剤にする過程で薬の効果を高める副成分が消失する

桂枝湯の主役もちろん桂枝(=シナモン)です。
みなさんは、シナモンの匂いを嗅いだことありますでしょうか。
人によって感覚は多少異なりますが、桂枝(=シナモン)は比較的香りが良く、心も体も落ち着けてくれる効果があります。
この香り(=アロマ効果)も桂枝湯の効果を高める補助作用の一つになります。
ですが、漢方エキス製剤では製造の過程でこのアロマ効果は削ぎ落とされてしまいます。

とある漢方医が桂枝湯の効果を高めるために、桂枝湯のエキス製剤に桂枝の原末を追加したところ効果が上がったとおっしゃってました。この理由は、桂枝の原末はエキス製剤と異なり生薬をそのまま粉々して製剤化するため、桂枝のアロマ効果は残存します。従って、アロマ効果は補助的に働いてくれ、桂枝湯の効果が高まったことになります。

また、何年か前の東洋医学学会では桂枝湯を風邪薬として運用する場合は『生の生姜のおろし汁』を入れる効果が上がる、とお聞きしました。これは、生姜の独特のアロマ効果が桂枝湯の効果を高めてくれ流のが要因のひとつになります。

実際に試してみましたが、どちらも「お風呂に入ったように身体がポカポカして温まって心地よい」感覚はありました。
ですが仮に『桂枝の粉末』と『生姜のおろし汁』の追加でエキス製剤の効果が上がったとしても、妊娠中に風邪をひいた場合にはそんなことをしてる余裕はないのかもしれません。

3、エキス製剤の処方量の上限が7.5gである

最後にエキス製剤の最大の問題点が処方量の上限が7.5gであることです。
エキスする過程で多くの補助効果を示す副成分が削ぎ落とされた上に、メーカーごとに生薬の主成分および副成分にバラつきがあります。
通常、煎じ薬では生薬のバラつきを最小限に抑えるために患者さんごとに微妙な匙加減で生薬の量を変えて調整します。
これを正しい意味で『薬を調合する(調整して混ぜ合わせる)』と言い、全てオーダーメイドで作成します。
しかし、医療用漢方エキス製剤は既製品なので、この正しい意味での”調合”という過程を取れません。
さらに、生薬の量に上限が7.5gと決められているので、処方量を増やすことができないので、漢方薬の必要な効果を出し切ることができません。

では、結局のところどのようにして漢方薬を上手に治療に取り入れたらいいのでしょうか。

『どの漢方薬を買うか』ではなく『どの人から買うか』が重要

(×)『風邪に効く』と表示されているから桂枝湯を買う
(○)この人から買う桂枝湯は風邪が治るから買う

皆さんの家の近くには漢方薬を専門とする医師または薬剤師はいらっしゃいますでしょうか。その方は、ドラッグストアや薬局の販売店員ではなく東洋医学的な診断ができる人でしょうか。

桂枝湯の『効能効果』を見て、自分で選んでも効果が出る人はほとんどいません。桂枝湯は確かに煎じ薬を使った方が効果が高いですが、それでも効果が出せない人もいます。それは、医学知識をかじった人でも同じことで、漢方や鍼灸などを総合的に東洋医学を学び、生薬の知識をより深めた人にしかその感覚は分かりません。

さらに、煎じ薬でもエキス製剤でもメーカーごとや生薬ごとに癖や特徴をよく理解し、みなさんが住んでいる土地の風土や気候に応じて、服用する患者さんの年齢・性別・体質も考慮して、漢方の生薬量や漢方エキス製剤を組み合わせなどを考えて初めて効果が発揮されます。

結局のところそれらを扱える経験や技術を兼ね備えた『人』から買うことが一番効率的で確実な方法だと思います・・・・。

なかなかそういう方と巡り合うのは大変ですが必ずいますので、自分の足で探してみるのが一番です。
素晴らしい治療家に巡り会えることを信じております・・・・。

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