西洋薬ではコントロールできない疾患の一つに婦人科系疾患があります。
そんな婦人科系疾患に役立つ治療技術が東洋医学。
我々治療家は、東洋医学における婦人生理学基礎である、
・五臓六腑『肝・腎・脾』
・怪奇の府
・任脈と衝脈
の3つを丁寧に体の反応から読み解い治療を施しています。
しかし一般の方は、ここまで深く理解する必要はありませんが、
ただ、この3つのうち日常生活に密着した五臓六腑を理解すると、
生活習慣の改善や大きな病気への予防へ繋がります。
今回は、その東洋医学における婦人生理の基礎の一つである五臓六腑のうち『腎』です。
『腎』は生殖器を含めた婦人科系疾患と多いに関係があります。
その『腎』の力が弱くなることが原因の『不妊』の実例を交えてお話しようとお思います。
安全な出産と産後迎える上で五臓六腑の『腎』はとても大切な考え方です。
今回の実例は『不妊症』ですが、
・更年期障害
・子宮筋腫
・子宮内膜症
・子宮頚癌、子宮体癌
など今現在婦人科系疾患に悩んでいる方は是非最後までご覧ください。
また、今回の症例で登場する鹿茸(ろくじょう)という生薬については、下記の記事に詳細をまとめてみました。
一度ご参照してから今回の記事を読むと理解が深まります。
『【リウマチの症例】冷え性に効果的な鹿茸(ろくじょう)〜動物性生薬とは何か〜』
~~~~目次~~~~
1、【症例】二人目不妊へのサポートでの成功事例
2、私自身が考える東洋医学の『腎』のイメージ:風船
3、腎が支える個々のエネルギーと妊娠の関係
4、『腎』と『妊娠・出産』の関係性
5、まとめ)東洋医学は出産と産後を楽しく乗り越える体作り
1、【症例】二人目不妊へのサポートでの成功事例
30代、女性。
2023年初夏に二人目の不妊症のご相談をいただいた。
週1回〜2週1回のペースで電話サポートしながら漢方治療を開始。
提携先の薬局と連携しながらご対応しました。
一人目も自然妊娠でしたので、二人目も自然妊娠をご希望。
顕微鏡受精などの高度医療は望んでいる方でもなかったです。
40歳手前だったので、徹底した食生活の改善ができれば自然妊娠は可能だ、という確信はありました。
徹底した食生活の改善は不妊治療にはとても重要です。
その理由は次回の記事で書きますが、基本的にこれだけでも十分妊娠に至るケースもあります。
最初の3ヶ月、血液の汚れである瘀血(おけつ)の処理、滋養強壮を行う活血(かっけつ)の治療。
合わせて、特殊な乳酸菌のサプリを使用して腸内環境=膣内環境の調整する治療を行う。
4ヶ月目以降、鹿茸(ろくじょう)を中心した漢方薬と栄養価の高いサプリを利用して治療。
5ヶ月目、細かい聞き取りに丁寧に対応して頂き、真面目に食事も変えていってくれたので妊娠に至りました。
さて、
鹿茸(ろくじょう)という生薬は東洋医学でいう五臓六腑の『腎』を整える生薬です。
では、この五臓六腑の『腎』とは一体何でしょうか。
今日はこの『腎』について深掘りしていきましょう。
2、私自身が考える東洋医学の『腎』のイメージ:風船
ここからお話するのはあくまでも私自身が考える『腎』のイメージです。
東洋医学は哲学そして医術であるから型はあるが正解はない。
今からお話することも正解ではなく、過去の医学書を読み解いた時のイメージです。
今回は、東洋医学の五臓六腑の『腎』のイメージについてお話をしたいと思います。
西洋医学では『腎臓=kidney(キッドニー)』は臓器=物体そのものを指します。
それに対して、東洋医学の五臓六腑の『腎』という”機能”を指します。
・西洋医学の腎臓=kidney(キッドニー):臓器=物体
・五臓六腑の『腎』:体全体に関わる機能=能力
では、五臓六腑の『腎』の機能とは一体何か?
それを一言で言い表すと、『風船』のような”機能”をイメージしています。
『腎主封蔵=腎は封蔵(ふうぞう)を主(つかさど)る』
という言葉が古代の医学書に書かれています。
『封=封じ込める』、『蔵=貯蔵する』という意味になるので、
”腎の機能”=”風船のようなものにいろんなエネルギーを閉じ込めている”
と捉えることができのるで、常に中心に圧をかけて封じ込めている『風船』のような”機能”を自分なりにイメージしました。
また、『風船』のようなイメージである根拠はもう一つあります。
『風船』は、温めると膨張しますが、冷やすと萎んでしまいます。
また外気圧が低くなると膨張し、高くなると萎んでしまいます。
この作用が人間の身体と酷似している為です。
例えば、
人間の体は、程よい温度で温めるといろんなエネルギーに満ち溢れ元気になります。
これは『腎』に含まれるエネルギーが大きくなり、『風船』がパンパンに膨れた状態と同じです。
しかし、外気温が下がってしまうと、いろんなエネルギーを消耗してしまい萎んでしまいます。
これは『腎』に含まれるエネルギーが小さくなっていき、『風船』が萎んだ状態と同じです。
また、
高山や深海など急に気圧の低い所へ行くと、『腎』という『風船』は一気に膨張します。
すると『腎』という『風船』に含まれるエネルギーが強すぎて三半規管の圧力を急激に上がリます
すると、耳鳴りや眩暈、頭痛や偏頭痛などの体の変化をもたらします。
逆に、
気圧が急激に高くなるの夏の暑い時期は『腎』という『風船』が外圧に押され萎みます。
すると、『腎』に含まれる各々のエネルギーが押さえ込まれいき、弱くなってしまいます。
こうして、虫垂炎や胃腸炎などの胃腸のトラブルだけでなく、子宮や卵巣の婦人科のトラブルを引き起こしていきます。
炎天下でゴルフ日和によく虫垂炎の手術が入ったりしますし、真夏の透き通った夜空の満月の日に出産が多かったりする理由はこのためではないか、と言われています。
したがって『腎』の機能というのは、
・『風船』のように個々のエネルギーを溢れないように封じ込む能力
・『風船』のように気温・気圧などの自然現象に柔軟に対応できる能力
を指している、と僕なりにイメージしています。
これが、妊娠とどう関わっているのだろうか。
それを説明する前に『腎』という『風船』が封じ込めている個々のエネルギーの能力についてまとめてみました。
3、腎が支える個々のエネルギーと妊娠の関係
腎が封じ込めているエネルギーに3つあります。
その3つが『気・血・水』という東洋医学でよく耳にするエネルギーの名前です。
①受精卵と胎児の発育に欠かせない動力:『気』
この『気』は体を動かす動力、エネルギーです。
お母さんの体の中で卵を作り、卵を成熟させるためのエネルギーになります。
卵に精子が入ってきてから着床して、その卵を成熟させる動力をこの『気』が担っています。
また、このエネルギーを利用して骨や筋肉を大きくさせていくので、胎児や乳児の発育に重要な役割を果します。
②栄養素及び全身へ栄養素を行き渡らせる能力:『血』
『血』という『血液=blood(ブラッド)』を思い浮かべる方が多いかと思います。
しかし、東洋医学ではもっと広く捉えています。
『血液=blood(ブラッド)』に含まれる血球成分を作り出すには、それなりの栄養素が必要です。
この栄養素も『血』に含まれます。
また、『血液=blood(ブラッド)』を全身に行き渡らせるには動脈は心臓のポンプの作用(心ポンプ)を利用しますが、静脈は筋肉の収縮を使った筋ポンプ作用を利用するので、このポンプ作用も『血』の能力になります。
妊娠時においては、赤ちゃんへの栄養素とそれを全身に届ける能力が該当します。
③温度や圧力に柔軟に耐えるための能力:『水』
水は深さや水量によって圧力を変えるので、一定の水分量が保てているとその水圧は一定になります。
また、お風呂に冷たい水が急激に流れ込んできても温度を急激に上がることはないように温度も一定に保ってくれます。
同じよう赤ちゃんが急激な温度や気圧の変化に耐えうるように一定の水によって妊娠の時にトラブルに対処してくれます。
4、『腎』と『妊娠・出産』の関係性
さて、『腎』の話に戻りましょう。
子供を産んだことのある人はご存知かと思いますが、妊娠をしたことない人はお母さんやおばあちゃんに妊娠した時の話を聞いてみてください。
産後は髪の毛がボロボロ抜け落ちてしまいます。
これは産後に『腎』の機能が低下して、『風船』に穴が空いたように各々のエネルギーが溢れ落ちてしまうのが原因です。
すると、
『水』の能力が低下して髪の毛まで行き届かなくなりツヤが無くなっていきます。
『血』の能力が低下して栄養が髪の毛まで行き渡らなくなり髪の毛の張りがなくります。
『気』の能力が低下して髪の毛の成長が見込めないために、抜け落ちていきます。
この病態を東洋医学では、『腎虚』と呼びます。
では、どうして出産すると母親は『腎』の機能が損なわれるのか。
赤ちゃんは羊水から出て臍の緒を切った後すぐの時は、お母さんから頂いた『腎』のエネルギーを利用して心臓や肺を動かし、筋肉や骨を大きくさせていきます。
赤ちゃんへ半分ほど『腎』という『風船』を分け与える形になってしまったために、母体の『腎』という『風船』は産後は萎み続けます。
この『風船』が萎んでしまった状態が、『腎虚』という病態で、産後疲れが抜けきれず髪の毛が抜け落ちる原因になります。
したがって、産後は『腎』という『風船』が小さくなるという前提に立った上で、東洋医学の不妊治療の治療目標は『腎』という『風船』を最大限に大きくしてあげることが目標となります。
逆に母体の『腎』という『風船』の大きさが小さいと、髪の毛が抜けたり産後の体力が一向に回復しない状態へ繋がっていきます。
ひどいケースですと、『腎』という『風船』が小さいだけでいろんな病気を引き金になります。
また、『腎』という『風船』が小さいと子供へ適切な『腎』という『風船』を届けることができずに流産や死産に至ることもあります。
さらに、『腎』という『風船』が小さいまま無理に出産へ持ち込むと母体への影響も大きくなります。
ですので、『腎』という風船をいかに大切な機能を果たしているか、ご理解いただけるかと思います。
この『腎』という『風船』を大きくしてあげるか、が大切な治療目標であり安全・安心な出産・産後に繋がってきます。
5、まとめ)東洋医学は出産と産後を楽しく乗り越える体作り
『子供との楽しい時間を共有すること〜妊産婦・妊娠サポートコースの由来〜』
以前こんな記事をお書きしました。もし呼んでいない方は是非一度読んで見てください。
当店の不妊治療のゴールが妊娠でも出産でもなく、産後の安全な暮らしと子供と楽しめむ為の体つくりです。
この目標は開業当初から変わりありません。
体外受精などの先進医療のゴールはあくまでも妊娠ですので、どうしても目先の利益になってしまいます。
ですが、子供が生まれてから育児はスタートするので、その先の長い年月のことを後回しにしてはいけません。
当店では、安全な出産と産後のより良い生活のために『腎』という『風船』を膨らませるよう日々治療にあたっています。
もしこの記事を読んで気になった方は、遠隔サポートも行なっていますので是非一度お問い合わせください。