現在、多く人が病院へ行って目にする漢方薬が医療用のエキス製剤です。
成川一郎氏の『漢方の主張』という著書をご存知でしょうか。
その本には医療用のエキス製剤の問題点を次のように指摘しています。

『葛根湯の各メーカーのエキス含有量が書かれているが、基準値を下回る品物が多い。さらに、エキス製剤の基準値も疑問を感じます。漢方医学の研究者である湯本求真の著書の『皇漢医学』という本には葛根湯の生薬量は、日本の基準値の2倍量が記載されている。』

例えば、エキス製剤にしてしまうと生薬本来の効果が落ちてしまう一つの例に桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)という漢方薬があります。この桂枝茯苓丸をエキス製剤にする過程で芳香成分が抜けて効果が落ちてしまいます
逆に、この効果が落ちてしまった桂枝茯苓丸のエキス製剤に芳香成分の生薬である桂枝の粉末を入れると、香りの成分が配合されるので桂枝茯苓丸の治療効果が格段に上がることは漢方を扱っている人の中では有名なお話です。

今日は、産婦人科でよく処方される桂枝茯苓丸を例に漢方の効果を最大限引き出す方法についてまとめてみました。

【目次】
1、桂枝茯苓丸とはどんな薬なのか
2、桂枝茯苓丸の『丸』とは何か〜漢方の4つ基本剤形〜
3、本当に困っている人にこそ漢方本来の力を届けたい

↓当店で使用している桂枝茯苓丸です

1、桂枝茯苓丸とはどんな薬なのか

不妊治療中の方や更年期、子宮内膜症、子宮筋腫など女性の疾患には欠かすことのできない桂枝茯苓丸という薬を一度は見たことある方もいらっしゃるかと思います。『金匱要略(きんきようりゃく)』(西暦200年頃)という書物に書かれている産婦人科領域で用いる有名な漢方処方の一つです。

桂枝茯苓丸は読んで字の如く「桂枝」と「茯苓」という生薬を含めた5つの生薬から成り立っている薬です。
・桂枝:発汗解表作用、降気作用、駒瘀血作用、鎮痛作用
・茯苓:利水作用、健胃作用、精神安定作用
・牡丹皮:(生理不順、鎮痛など)駆お血作用、清熱作用
(引用元:漢方210処方 生薬解説〜基礎から運用まで〜)

処方全体の運用としては、徳川将軍家の典医としてその名を残した浅田宗伯(あさだそうはく)は下記のように述べています。

「此方(桂枝茯苓丸)は瘀血(おけつ)より来る癥瘕(ちょうか)を去るが主意にて、すべて瘀血(おけつ)より生ずる諸症に活用すべし」(『勿誤薬室方函口訣』より)

産科領域では、もともとは流産時の出血多量や、胎児死亡、後産が出ない場合や止まらない場合に、腹中に止まる「癥瘕(ちょうか=かたまり)」を取り去る目的に作られた漢方処方が桂枝茯苓丸です。
この腹中に止まる「癥瘕(ちょうか=かたまり)」は、現在でいう子宮筋腫や子宮内膜症に類似しているので、桂枝茯苓丸は婦人科領域にも応用されています。

出産後に骨盤内が回復し切っていない状態を元通りする方剤が桂枝茯苓丸で、一般用にしか販売されていない芎帰調血飲第一加減 (きゅうきちょうけついんだいいちかげん)の原点になった薬です。
(芎帰調血飲第一加減 を詳しく知りたい方は→コチラ
産後のケアをしっかり行うことはその後の病の予防につながります。
そもそも出産をきっかけに様々な病が発症するということは臨床的に良く観察されます。
例えば、うつや不眠なの自律神経疾患、リウマチ、漬瘍性大腸炎、各種皮膚病、腰痛や坐骨神経痛などは産後に再発または発症したりします。さらに、「血脚気」といって産後に下半身の力が入らなくなり歩けなくなる者もいます
これらは東洋医学では『お血(瘀血)』の症候と考えられており、産後に瘀血を改善することは、骨盤内臓器の血流を改善することに繋がり、大きな病気の治療や予防ができます。
この産後に起こる病気の治療とその予防の両方を行えるのが桂枝茯苓丸という薬です。

2、桂枝茯苓丸の『丸』とは何か〜漢方の4つ基本剤形〜

漢方薬の本来の力を最大限発揮させる方法をご存知でしょうか。
漢字というのアルファベットのような記号とは全く違います。
たった1字でいろんな意味を表現できる素晴らしい文字です。
漢方薬にもたくさんの漢字が並んでいますが、それらには1つ1つに深い意味をなしています。

・葛根湯、桂枝湯(けいしとう)などのように末尾に『湯』がついている漢方薬
・安中散(あんちゅうさん)、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)などのように末尾に『散』がついている漢方薬
・桂枝茯苓丸、麻子仁丸(ましにんがん)などのように末尾に『丸』がついている漢方薬

この末尾に書かれている文字は、

『湯(=湯液、煎じタイプ)』
『散(=散剤、粉薬タイプ)』
『丸(=丸剤、丸薬タイプ)』

という意味を示しており、「この文字で書かれている薬の財形(=湯液、散剤、丸剤)で服用すると、治療効果が高くなります』という事を表現してます。
つまり、桂枝茯苓丸は『丸剤』で服用することが、漢方薬の本来の力を最大限発揮させる飲み方ですよ、ということを意味しています。

そもそも漢方の基本剤形には、煎じ薬、エキス製剤(顆粒、錠剤)、散剤、丸剤の4つがあります。

①煎じ薬

生薬を刻んで、グツグツと煮出して、煮出した汁を飲む薬のタイプ。
コーヒーで例えるなら、サイフォン式コーヒーです。ドリップ式のコーヒーと比べると、やわらかで風味豊かな味わいを楽しむことができます。 また、香りが立ちやすく、安定した味わいのコーヒーを淹れることができるという点が特徴も煎じ薬と類似しています。
・メリット:生薬成分がそのまま濃縮されているので、漢方薬本来の力が一番発揮しやすい
・デメリット:煮出す手間があり、持ち運びに不便、生薬の苦味を感じやすい

②エキス製剤(顆粒、錠剤)

①で作った上積み液を、蒸発乾燥して顆粒状や錠剤にした形で飲む薬のタイプ。
コーヒーで例えるなら、インスタントコーヒーのイメージです。
インスタントコーヒーとは、一度抽出されたコーヒーから水分を除去して顆粒状にしたものなので、お湯に溶かすだけで飲むことができます。
飲みたいと思った時にお湯を注ぐだけで手軽に飲むことができるので、忙しい朝や、仕事の合間にもぴったりな部分が、エキス製剤と類似しています。

・メリット:煮出す手間がない、いつでも服用可能です、持ち運びも便利です、加工の際に甘味などをつけると飲みやすくなります、メーカーと漢方の種類によっては煎じ薬と同等の効果を示すものもあります
・デメリット:製剤の基準に煎じ薬の主成分の70%以上含有していれば良いので漢方薬としての効果が弱い、さらにインスタントコーヒーと同じで風味も損なわれてしまうので他の剤形に比べて効果が著しく弱い

③散剤

生薬を粉々にして服用する薬のタイプ。
昔は、薬研(やげん)と呼ばれる生薬を粉末にする道具を用いて粉々にしていました。
お湯で濡らしたお茶ではなく、粉末状にした抹茶のようなイメージの漢方薬です。

・メリット:生薬をまるごと粉々にしているので、漢方薬の効果を余すことなく発揮できます、煎じる手間はない
・デメリット:粉薬なのでただでさえ飲みにくい上に、生薬の苦味が強く感じやすい剤形なので飲みにくいです、散剤への製品化する手間があるので既製品が少ない

④丸剤

③を蜂蜜などで丸めて作った薬のタイプ。
丸剤はメリットばかりで、苦味もなく、服用も保存も持ち歩きも楽で、利便性の良いため、7世紀以降の中国の古代の書物(千金方や外台秘要など)に急速に丸剤の内容が増えている。
モンゴル医学にも丸薬の記載が多数あり、中国やモンゴルが国力が強い時代の書物に記載されている薬の多くは丸薬で、丸薬開発は国の繁栄に欠かせない、と歴史的背景から個人的には思うところです。

・メリット:③と同様に薬としての効果は高い、丸状にしているので持ち運び便利です、コーティングされているので生薬の苦味も感じないため飲みやすい、煮出す手間もないのでいつでも服用可能です、生薬の保存には最適な加工であるため保管が楽です、小さな粒を20個単位で服用なので服用しやすく容量も調節しやすい
・デメリット:丸剤へ製剤化に手間があるので既製品が少ない

どの剤形が優れている、という訳ではなくどの剤形にも必ずメリット、デメリットがあります。
もちろん服用する人の生活習慣、生活コストなどから服用できる剤形、服用できない剤形もあります。
そういった様々な点を考慮しながら、服用する人に見合った漢方薬を一つ一つ丁寧にご提案するのが我々薬剤師の勤めになります。

3、本当に困っている人にこそ漢方本来の力を届けたい

もしあなたが田舎に佇むコーヒー専門の店員だった場合、遠方から遥々来られるお客さんに対してインスタントコーヒーを提供するでしょうか。
漢方薬をコーヒーで例えるなら、漢方のエキス製剤は機械的に作られたインスタントコーヒーで、漢方の煎じ薬はプロの職人が一人一人丹精込めて手作りしたサイフォンコーヒーです。
遠方から遥々来られるお客さんに対して、有効成分だけを考えるとインスタントコーヒーで十分かもしれませんが、風味や味、有効成分を引き立たせる副成分などのコーヒーの味を丸ごと体感して頂くサイフォンコーヒーを提供したい、と思うのがプロの職人です。

よもぎ鍼灸院は仕事帰りに寄れるような立地ではなく、道内各地からわざわざ治療の為に休みを取って来られる方が多数いらっしゃいます。
皆同じように病院で治療を受けても上手くいかず、遥々遠くの東川町まで藁をもすがる思いで来られる方ばかりです。
もちろん我々もプロの職人なので、コストを抑える目的でインスタントコーヒーを上手に加工して効果や価値を高める方法も必要なケースが多々あります。
しかし、当店に訪れる方はそういった加工を施したインスタントコーヒーでは太刀打ちできないような深い悩みを持った方が多数いらっしゃいます。

そんな本当に困っている方の元へ漢方薬の本来の力を送り届けたい!

という願いを込めたサービスが、よもぎ鍼灸院の漢方薬の購入サポートというサービスです。
この願いが多くの人に届くことを心より願っています・・・。

妊活・妊娠中・産後ケアへのおすすめのメニュー

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妊産婦・妊娠サポートコース¥5,000(税込)

よもぎ鍼灸院では不妊治療を行ってます。子宝鍼灸と子宝漢方(煎じ薬)を同時に扱える道北唯一の鍼灸院です。
不妊治療に力を入れている鍼灸院で働いてた経験から産前だけでなく産後のサポートの重要性を感じたので、妊産婦・妊娠サポートコースというコース名にしました。

【目安時間:初診1時間20分/再診50分】

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ニュースキャンには鍼灸にできない体の調整機能があります。鍼灸と合わせて行うことで相乗効果で体が自然に治す力を高めてくれ、治療効果をより持続的にしてくれます。水曜日や土曜日に健康相談室にてニュースキャンのセッションの細かい説明や生活指導を行い、それを基にこのコースの治療プログラムを構成いたします。完全オーダーメイドの治療になります。
お得な回数券(3回券)税込¥4500(1回あたり¥1500)も販売しています(有効期限なし)
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①鍼灸院に通院されている方
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