✅10代〜20代の人で自律神経失調症に悩んでいる方
✅産後のイライラが止まらず家族に当たってしまう方
✅20代から40代の若年性更年期のような症状で悩んでいる方
そんな若い女性が、当店にはよく来店されます。
その大半の人は病院で検査を受けてもどこにも異常がないと診断されて、
・生理痛や頭痛を抑える目的で鎮痛剤
・生理周期を整え、痛みを抑える目的でピルなどのホルモン剤
が処方されて、それを一生飲み続けるという不安に駆られています。
つまり、前回の記事でお話ししたように
✅いつまで続くかわからない
✅ずっと同じ治療=同病同治(どうびょうどうち)の繰り返す
という不安に悩んでいる事をご来店時によくお聞きします。
そこで、今日はこのような若年性更年期障害や自律神経失調症などの精神的ストレスに悩む若い女性に手に取っていただきたい”加味逍遙散(かみしょうようさん)”という漢方薬を徹底解析することで、
✅同病異治(どうびょういち)を実際にどうやって運用するのか
✅漢方薬局を利用するメリット
についてお話しさせていただきます。
尚、同病異治(どうびょういち)とはなんだろ?同病異治(どうびょういち)って何で必要なの?と感じた方は、下記のリンクから過去の記事を参照してから今回の記事を読んでいただけると幸いです。
〜〜〜〜〜目次〜〜〜〜〜
1、加味逍遙散(かみしょうようさん)とは?その主薬は一体何か
2、加味逍遙散(かみしょうようさん)の問題点とは?:山梔子と甘草
3、加味逍遙散(かみしょうようさん)の実際の運用方法について
4、まとめ)”知識”と”技術”のどちらも必要な要素
1、加味逍遙散(かみしょうようさん)とは?その主薬は一体何か
”加味逍遙散(かみしょうようさん)”とは、『逍遙散(しょうようさん)』という基本方剤に牡丹皮(ぼたんぴ)と山梔子(さんしし)という生薬を加えた粉タイプの漢方方剤のことです。
生薬のことを『気味』と呼び、”2つの『気味』を加えた”という意味で『逍遙散(しょうようさん)』に『加味』という接頭語がついています。
『逍遙散(しょうよさん)』とは”勝手気ままにプラプラする』という『逍遙(しょうよう)』の語源から
✅自律神経失調症や更年期障害のような主訴がコロコロ変化する病態
✅たくさんの主訴がありすぎてわからなくなってしまう不定愁訴のような病態
に使われる漢方方剤のことを意味しています。
加味逍遙散(かみしょうようさん)のメイン生薬(=主薬)は、
①柴胡(さいこ)+芍薬(しゃくやく)
②当帰(とうき)+芍薬(しゃくやく)
という組み合わせです。
①柴胡(さいこ)+芍薬(しゃくやく)
主に、精神的な症状の中でも”抑うつ”症状を改善してくれる組み合わせです。
具体的には、
✅体の熱感、のぼせ、動悸、顔面紅潮、手足の冷えなどの症状(=血管運動症状)
✅イライラ怒り易い、不安、不眠、めまい、頭痛などの症状(=精神運動神経症状)
などの症状が改善されていきます。
これらの症状が強い場合は、山梔子(さんしし)と牡丹皮(ぼたんぴ)を加えた加味逍遙散(かみしょうようさん)がより効果的です。
②当帰(とうき)+芍薬(しゃくやく)
この生薬の組み合わせは、主に血の巡りを改善することで、子宮や腹腔臓器の機能改善していきます。
これらの機能改善によって
✅貧血、冷え性、月経不順、月経痛、月経前症候群(PMS)(肩こり、腰痛、倦怠感など)
の症状を改善しています。
2、加味逍遙散(かみしょうようさん)の問題点とは?:山梔子と甘草
加味逍遙散(かみしょうようさん)を運用していく上の問題点が2つあります。
その問題点は山梔子(さんしし)と甘草(かんぞう)という生薬にあります。
①山梔子(さんしし)の問題点:腸間膜静脈硬化症
山梔子(さんしし)はアカネ科のクチナシという植物の果実を薬として利用しています。
この山梔子(さんしし)の作用としては、頭に血が上ったような怒りを沈めてくれて、精神を安定させる作用があり、肝臓などの臓器の機能を回復に役立つ生薬とされています。
ですが、この生薬の問題点は長期運用した場合、”腸間膜静脈硬化症”と呼ばれる病気が起こることがあります。
”腸間膜静脈硬化症”とは、『腸を取り巻く膜と静脈が硬くなって機能を失う病気』です。
薬の服用を中止すれば元に戻る病態なので予後が悪いという事はありませんが、ひどいケースですと手術をしないといけないケースも出てきます。
もともと古代の書物にも山梔子(さんしし)は長期運用はしてはいけない生薬に分類されています。
長期間とはどのくらい?一体何年のこと?かというと、それは人によって違いますので不明です。
不安な方は山梔子(さんしし)が入っていない『逍遙散(しょうようさん)』という漢方薬が市販されています。
漢方専門薬局であれば購入可能なので是非一度ご相談することをおすすめします。
②甘草(かんぞう)の問題点:偽アルドステロン症
甘草(かんぞう)による偽アルドステロン症と呼ばれる病気を誘発することがあります。
ほとんどの漢方薬には必ずと言っていいほど含まれる生薬の1つである甘草。
この甘草の副作用として有名なものがこの病気で、これを起こすと体のミネラルバランスが崩れていく厄介な病気です。
その作用は少量でも起こることもあるので、充分注意しながら我々も使用しています。
もし甘草(かんぞう)で副作用が出た経験がある人は甘草(かんぞう)という生薬を減らして漢方薬を作っていただても”加味逍遙散(かみしょうようさん)”の主作用には影響はないです。
3、加味逍遙散(かみしょうようさん)の実際の運用方法について
各々の生薬にはそれぞれの別々の性質があります。
ですが、その全てをご紹介はできませんので、今回は柴胡、当帰、山梔子、甘草の4つの生薬に絞ってご説明をさせていただきました。
これらの生薬の効果と副作用を踏まえて、実際に加味逍遙散(かみしょうようさん)をどのように運用していけば良いのでしょうか。
若い女性が更年期の症状や自律神経失調症のような不定愁訴に悩んでいるとします。
この場合は、まだ若いので10~20年単位で漢方薬のサポートを受けながらお付き合いすることが想定されます。
このような長期運用をする可能性が高いと考えられる場合は、
✅あらかじめ山梔子(さんしし)という生薬を除いた『逍遙散(しょうようさん)』をご提案する
✅症状が軽減した段階で『加味逍遙散(かみしょうようさん)』→『逍遙散(しょうようさん)』に切り替える
という対応をしていきます。加味逍遙散(かみしょうようさん)から山梔子(さんしし)を除いた『逍遙散(しょうようさん)』という漢方薬(=漢方薬局の専売特許品)が店頭に並んでいますので、適材適所で選択していきます。
また甘草(かんぞう)という生薬で副作用が出た経験のある方がいた場合は、
✅あらかじめ甘草(かんぞう)を減らしてあげる
という対応を行うだけで未然に副作用が防げます。
このように漢方専門薬局であれば患者さんの状態に合わせてオーダーメイドで作成して販売できます。
さらにご来店の時の症状に応じて、
✅イライラの症状が強い→柴胡(さいこ)の生薬量を多くする
✅貧血、皮膚のガサガサの症状が強い→当帰(とうき)の生薬量を多くする
など、その人の症状において生薬の量を調整してあげればどんな状況にも対応できます。
これが漢方薬局を利用する最大のメリットです。
つまり、
”これらの『知識』があり、かつオーダーメイドで生薬の量を調整できる『技術』を兼ね備えている”
という利点が漢方専門薬局にはあります。
生薬や漢方薬そのものを管理していくことだけでも一般の人にはもちろん大変です。
ですが、病院やクリニックであっても規模が大きい病院やクリニックでしかその対応できません。
ドラッグストアや病院の前にはあるよう調剤薬局では全く対応できないので、漢方専門薬局を利用するメリットは高いのではないでしょうか。
4、まとめ)”知識”と”技術”のどちらも必要な要素
加味逍遙散(かみしょうよさん)の”逍遙散(しょうようさん)”とは、病態がコロコロ変化しやすい不定愁訴に使われる漢方薬のことです。
このコロコロが変化する症状に対して適材適所で治療を施すことを『同病異治(どうびょういち)』とお伝えしました。
この『同病異治(どうびょういち)』を漢方薬で運用するには、各々の生薬を適切な容量で使いこなす”知識”と”技術”が必要です。
”知識”があっても”技術”がなければ使いこなせません。
漢方薬を扱う”技術”というのは、適材適所で各々の生薬を調整できる”生薬のサジ加減”のことです。
この”生薬のサジ加減”という”技術”を兼ね備えているのが漢方薬局の最大のメリットになります。
当鍼灸院にはない”生薬のサジ加減”という”技術”を有する漢方薬局様の力をお借りしたおかげで救われた北海道の医療難民は少なからずいる事は言うまでもありません・・・・。