2024年も残すところ僅かになりました。
今年よもぎ鍼灸院で最も多かった疾患は、『心の病=精神的疾患』です。
この精神的な疾患が最も苦戦を強いられましたが、当店が最も成果を出した疾患のひとつでもあります。
苦戦を強いられた理由としては、
・我々スタッフの頭の中でまだまだ精神疾患と東洋医学との関係性について理解を深めていないこと
・精神疾患と東洋医学の関係性を皆さんと共有ができないこと
が一番にあると感じました。
そこで今年最後の締めくくりとして、『心の病と東洋医学』と題して、精神疾患に対する東洋医学の考え方とそれをサイエンスの角度からみた考え方を皆さんと共有していこうと思います。
現在、
・更年期、PMSなどの婦人科系疾患
・自律神経失調症やうつ病、統合失調症などの精神疾患
・注意欠陥多動性障害や自閉症スペクトラム障害の神経系疾患
・メニエール病、慢性胃炎などのストレスが関係する疾患
などのメンタルストレスなどで精神疾患で苦しんでいる方は、
ぜひ最後まで読んでいただけると幸いです。
〜〜〜〜〜目次〜〜〜〜〜
1、心の病の原因は”脳”にあるという現代医学
2、心の病の原因は”内臓”にあるという東洋医学
3、現代サイエンスで見る東洋医学の”腸-脳-感情”の関係
4、まとめ)2025年の課題:東洋医学の考え方の共有
1、心の病の原因は”脳”にあるという現代医学
精神的に疲れて胸が苦しくて、夜も眠れない時に病院へ行くと精神薬や睡眠薬などの薬が処方されますね。
薬によって作用する神経は異なりますが、精神薬も睡眠薬などの薬に共通する事は、
・脳の神経の伝達速度を変えることによって精神状態を薬でコントロールしましょうね
という部分です。
(具体的なお話はどこかのタイミングでします)
薬剤師として働き始めて2024年で17年目になります。
今も現役の薬局で薬剤師を行っている立場ではありますが、脳の神経伝達を整えるだけで不安や睡眠が解消される人はほとんどいないのが現実です。
最初は効き目がよくて楽になるケースもありますが、いずれ神経が麻痺して薬はだんだん効かなくなって薬の量が増えていく人を間近で見てきたのが我々薬剤師です。
2、心の病の原因は”内臓”にあるという東洋医学
東洋医学には、『五臓六腑』つまり”内臓”に、”感情=心”が宿るという考え方があります。
この考え方に僕が出会ったのは、約15年前の2015年前後でした。
具体的な話はここではしませんが、大雑把に言うと、『木・火・土・金・水』という5つの自然界の概念があります。
その概念は、人間の体に置き換えると『肝・心・脾・肺・腎』という5つの機能に相当し、それぞれの機能には固有の感情を司っている、という概念が東洋医学の世界では昔から伝わっています。
お恥ずかしい話ですけども、2015年頃の当時の自分達もこの話を聞いて全く理解することはできませんでした。
ただよくわからないまま何度も何度も勉強し、何度も何度も臨床経験を繰り返していくうちに、内臓を整えて腹部の状態を安定化させることによって感情が落ち着いてくるということは腑に落ちてくるようになりました。
その腑に落ちた理由は2つあります。
一つ目の理由は、臨床現場での実体験です。
患者さんの腹部の状態から診察を行い、弱っている内臓機能を整えて治療を施します。
内臓機能が落ち着いてくるとなぜか精神状態が落ち着いてきて、それだけではなくいろんな体の不調が取れていくようになりました。
そんな姿を頻繁に目の当たりにするようになったのが2024年です。
二つ目の理由は、科学の進歩です。
現代科学において”内臓-脳-感情”の関係性は少しずつ解明されてきています。
”内臓-脳-感情”の関係性を科学で解き明かす事はそう簡単ではありませんのでまだまだ発展途上なのですが、それでも科学の進歩によって少しずつ解明している事は事実です。
3、現代サイエンスで見る東洋医学の”腸-脳-感情”の関係
”腸-脳-感情”の3つの関係性は、2024年現在ではっきりわかっていることは3つあります。
①人間の発生学が関与しているというケース
人間の内臓のもともとは原核生物に由来すると言われております。
もちろんこの原核生物にも感情はもともと備わっているので、原核生物が痛みを感じれば暴れ回ったりもするし、食べ物の食べた時に好き嫌いもします。
これは原核生物の体中に張り巡らされているセンサーで感知して、痛みや好き嫌いの感情をからだ全体で表現しています。
もし人間の内臓そのものが原核生物から発生しているとすると、人間の内臓に張り巡らされているセンサーで感じ取った情報(=感情)は人間にしかない高度な機能を持つ脳を介さずに、内臓自身の動きを決定づける情報源となります。
逆に考えると、脳の状態に関わらず内臓の動きの良し悪しが、感情を受け取るセンサーの敏感さや緊張感を決めていることになります。
・内臓の動き悪い=感情を受け取るセンサーの緊張感が増大=感情の起伏が激しくなる
・内臓の動き良い=感情を受け取るセンサーの緊張感が低下=感情の起伏がなくなり
つまり、脳を中継しないため内臓の動きに注目するだけで、感情をコントロールが可能になってくることを意味しています。
この見解だけでも現代医学とは全く異なる発想ですね。
②腸内細菌が関与するケース
内臓にはたくさんの腸内細菌が存在しています。
脳は1000億を超える神経のネットワークで電気信号のやりとりを行っている、言われています。
その神経のネットワークが集中する場所が脳の次に多いのが内臓系であり、その数は1億くらいあるそうです。
その内臓系に存在する神経のネットワークを腸内細菌が発生する化学物質が刺激することによって生まれた電気信号が脳に伝わり感情へ影響していると考えられています。
・腸内細菌の状態=それ相応の化学物質が発生=脳へ与える電気信号が変化=感情の決定
腸内細菌を使ったうつ病の臨床研修やエビデンスも海外では報告もありますし、当店もそれに使用経験もあり良い結果が繋がったケースは多々あります。
③ホルモン系が関与しているケース
ホルモンの分泌量を決定するのに重要な器官の1つに副腎という臓器があります。
この副腎という臓器は、
・内臓状態を感知してホルモンの分泌量をどのくらい分泌したら良いか?
ということを脳に情報提供する働きがあります。
つまり、内臓状態が悪くなり腸内の動きが悪くなることによって、ホルモン量を過剰分泌しなさいという命令をするのがこの副腎という臓器です。
また、その情報を受け取る脳下垂体という部分が脳にありますが、この脳下垂体はその情報を受け取った時に放出される化学物質(=βエンドルフィン)によって高揚感や幸福感などの感情を決定すると言われています。
・内臓の状態=副腎で感知してホルモンの放出量を脳へ伝達=同時に放出されるβエンドルフィンによって感情が決まる
副腎という臓器の異常興奮が感情の源泉である、という見解です。
以上3点から2024年現在で分かっている”腸-脳-感情”の関係です。
詳しい話はどこかで行いますが、
・これらの基礎研究によって東洋医学の”腸-脳-感情”の関係が証明されてきている事
・実際の臨床でも東洋医学の”腸-脳-感情”の関係を利用して病気の軽減や治癒している事
を考えると、とても考え深い一年になったのが2024年でした。
4、まとめ)2025年の課題:東洋医学の考え方の共有
皆さんの周りには「五臓六腑とは何ですか?」と聞かれて答えられる人は何人いるでしょうか。
五臓六腑という東洋医学の考え方は実際の過去の書物を読んでそれを解釈する人、そしてその解釈を伝える人によって様々な答えがあります。
従って、「五臓六腑とは何ですか?」という問いに対する正しい答えというのはないのかもしれません。
ただ何度も臨床経験を重ねていくと最初は意見や解釈の仕方が様々でたくさんあり意見がバラバラでしたが、臨床経験をある一定のラインを超えたときには行き着く先がやっぱり皆同じ方向を向いていて、いろいろな病気が治っていくことをつくづく感じます。
そこから見えてきた課題として、
・我々自身が東洋医学を生んでいく上でどんなところでつまずいたのだろうか
・そのつまずいたところは、考え方や見方をどう変えることによって、その壁を乗り越えてきたのか
など今まで苦労した部分や考え抜いた部分について皆さんとまだまだ共有が足りないな、と思いました。
2025年の課題としては、そういった東洋医学の考え方や理解の仕方について皆さんと少しずつ共有することで、我々も理解を深めていける一年にしたいと思っています。
2024年、よもぎ鍼灸院を支えていただきまして誠にありがとうございました。
来年も2025年も皆さんにとって良い1年になりますことを心よりお祈りしております。
良いお年をお迎えください。