お灸をしても、温かく感じないことがあります。

ご家庭でお灸をしていても、
「なかなか温かくならない」
「何度お灸をしても熱を感じない」
という方がいらっしゃいます。

特に冷え性の方では、
こうしたことが少なくありません。

お灸は同じものを使っていても、
その温かさの感じ方には個人差があります。

私どもが鍼灸治療の中で大切にしていることの一つが、
この「温度感覚」です。

冷え性だけではない、温度感覚の鈍さ。

お灸の温かさを感じにくい方は、
冷え性の方だけではありません。

私どもの臨床では、
がんやリウマチなどの疾患を抱える方、
また、子宮内膜症や月経痛など、
女性特有の不調を抱える方にも、
お灸の温かさを感じにくいケースを経験しています。

もちろん、同じ病名であっても、
身体の状態や温度の感じ方は一人ひとり異なります。

私どもが大切にしていること

病名だけで判断するのではなく、
その方の身体が今どのような状態にあるのかを
見極めることです。

そして、お灸の温かさをどのように感じるかということも、
身体の状態を考えるうえでの
一つの手がかりになると考えています。

同じお灸なのに、温かさの感じ方が変わる。

ところが、鍼灸治療を受けた後に同じお灸をすると、
それまで感じにくかった温かさを、
はっきりと感じられるようになることがあります。

鍼灸治療の中で経験している変化

お灸の種類も、温度も変わっていません。
変わったのは、
身体が温かさを感じ取る感覚です。

これは、私どもの臨床でも経験する変化です。

お灸の温度そのものではなく、
身体がその温かさをどう感じ取るか。

私どもは、この変化を鍼灸治療における
大切な観察点の一つと考えています。

目の前の方のお身体に、
実際にどのような変化が起きているのか。

私どもは、こうした臨床での観察を
大切にしながら治療を行っています。

温度の感じ方は、なぜ変わるのでしょうか。

臨床の中で経験する、こうした温度感覚の変化。

その背景を考えるうえで、
科学的な研究にも興味深い手がかりがあります。

温度に反応するボーダーライン

温度に反応する「ボーダーライン」は、
常に一定ではありません。

実は、私たちの身体には温度を感じ取る仕組みがあり、
その反応するボーダーラインは常に一定ではないことが、
科学的な研究によって明らかになっています。

科学によって明らかになっていることは、
身体の働きのすべてではありません。

私どもは、臨床で経験している変化を大切にしながら、
その背景を理解するための手がかりとして、
こうした研究にも目を向けています。

この温度感覚の仕組みについては、
別の記事で詳しくご紹介しています。

関連記事|温度感覚の仕組み

温度に反応するボーダーラインは、常に一定ではない。

― 温度感覚とTRPチャネルの研究から ―

温度感覚の変化には、身体の不調の深さが関係します。

鍼灸治療後の温度感覚の変化は、
治療直後に特に感じられることがあります。

そして、その変化がどのくらい続くかは、
身体の不調の深さによっても異なると、
私どもは考えています。

比較的浅い不調であれば、
温度感覚の変化が1〜2週間ほど続くこともあります。

一方で、不調が深い方では、
変化が長く続かないこともあります。

こうした違いを確認しながら、
私どもは一人ひとりの身体の状態に合わせて
施術を行っています。

鍼灸院で整え、ご家庭のお灸で支える。

私どもが大切にしているのは、
鍼灸院での治療と、
ご家庭でのお灸を上手に組み合わせることです。

鍼灸治療を受けることで、
それまで感じにくかったお灸の温かさを、
感じられるようになる方がいらっしゃいます。

そして、ご家庭でもお灸を続けることで、
その感覚を維持しやすくなると、
私どもは考えています。

身体の不調が深い方では、
初めのうちは鍼灸院へ通う頻度が多くなることもあります。

けれども、身体の状態が安定してくれば、
少しずつ通院間隔を延ばしていくことができます。

中には、月に一度ほどの施術と、
ご家庭でのお灸を組み合わせながら、
養生を続けている方もいらっしゃいます。

私どもが大切にしている養生

鍼灸院で整え、
ご家庭で支える。

私どもは、この二つを組み合わせることが、
お灸をよりよく活用するための
大切な方法の一つだと考えています。

ご家庭でのお灸を、もっと身近に。「お灸文庫」

ご家庭でのお灸を、日々の養生として
取り入れていただきたい。

そんな思いから、私どもは
本棚にしまえるお灸「お灸文庫」を作りました。

お灸文庫は、大切な人への贈り物として、
また、ご自身の養生を始めるきっかけとして生まれた
小さなお灸の箱です。

温かさの異なる3種類のお灸を収め、
使わないときには本棚にしまったり、
お気に入りの場所に飾ったり。

暮らしの中で、
お灸をもっと身近に感じていただけたらと思います。

一冊のお灸からはじまる、
わたしの養生時間。

お灸文庫については、
別の記事で詳しくご紹介しています。